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表紙解説
英霊はポチから巨大なウスとなって少年と重なり導いていく
福岡西部には巨大な犬の形をした不思議な地形がある。
その犬の前足にあたる村には、命をかけて散った防人の石碑が無数に散在する。さびれた海岸沿いの小さな村を見渡せる小高い丘があった。
丘の高台には戦死した英霊を鎮める忠霊塔がそびえ立ち、この村人たちを悲しげに見下ろしていた。この巨大な犬の地形には歴代の殉死した戦士たちの英霊が漂い、いつも何かを語りかけていた。
少年は英霊たちの囁き(ささやき)を聞きながら不思議な幼少期を過ごしていく。それは少年が巨大な英霊に包まれたときに辿る(たどる)、意味のある不可解な暗黒の青年期を暗示する出来事であった。
やがて思春期が訪れ、少年は悩みと絶望の果てに、忠霊塔の暗闇の声に恐るべき誓いをしてしまう。(全てのものを犠牲にしてでも、生きる意味を知りたいか…)、犠牲を引き換えにした真理の道を貫く闇の声への誓いであった。
少年の目指す優先すべき道は、この世に適合することではなく、逆に世に背を向け、歪んだ世の仕組みを正す「光の道」を示すことになる。
かくして、暗黒の少年期から青年期へとあてもなくさまよう、長い長い放浪の旅を続けていく。あどけない少年は知らずに、予言されたポチの辿る英霊の使命を背負い、自分の正体と「宿命の道」を探す手がかりとなる出会いと人生を象徴的に演じていた。
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