3話 さまよう猫
ゼンとまことたちはミケを抱いて、仮住まいに連れて来たが、その家には既に別の三毛猫が飼われていた。「仲良くしてね」とその傍に降ろした。
急に現れたミケにその猫は警戒した。よそ者の臭いを嗅ぐと、たちまち「フーッ!」と爪をたてて激しい喧嘩を挑んで来た。ミケは不意打ちを喰らい驚いて一目散に何処かに逃げていった。 畑の中を駆け抜けていく後姿を見て、まことは後を追いかけて「ミー、ミー!」と何度も呼び続けた。 …略
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…略 スクロール↓
まこととかつえは、あちこちを捜しまわったが、行方を見失った。
やがて夕方になって、ミケは忠霊塔を目印にしながら、どうにか元の家に戻って来たが、もうその家には誰も居なかった。家の中は真っ暗闇で、人影もなくシーンと静まりかえっていた。「ニャーオ?ニャーーオン…」
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ミケは、今までの安らぎの家が暗闇の世界に変わったことを知った。 ミケは闇に向かって主人を求めて泣き疲れるまで彷徨い続けた。…略 →
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ミケは仕方なく、あの意地悪な猫の待ち構える怖い場所に戻るしかなかった。 …略
夜中に猫の泣き声を聞くと、まことは布団からとび起きて外を捜し廻った。「ミー!ミー!」離れた所からこちらをうかがうミケの目が光っていた。 まことは、暗闇の中に目を光らせて泣くミケに、いりこのご飯を見せて「ミー、おいで」と何度も呼んだ。だがミケは恐れて仮住まいの家には決して近寄っては来なかった。
「家に着く猫の習性は哀れかばい…」心配して後ろにいたゼンがつぶやいた。 …略
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落ち葉の季節になった。チカがガレキの跡地をさまようミケを見つけて、何度も連れ戻そうとしたが、仮住まいの家の近くまで来ると、いじめる猫の気配を感じたのか、激しく暴れてチカの手を引っ掻いて、どこかへいなくなってしまうのだった。
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こうして「安らぎの家」を失ったミケは野良猫となって、何日も忠霊塔の下の薮の中や荒れ野をさまよい続けた。家と主人が分裂した二つの家の間を、何度も行ったり来たりしていた。
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大晦日の寒い日、まだ未完成だった家に早めに戻ることになった。ゼンは手伝いに来たおばさんと二階の部屋で荷物を片付けていた。まことはその様子を後ろでぼんやりと見ていた。そのとき、階段の下の方に何やら静かに現れた生き物の気配を感じた。「ん…」 まことはそーっと近づき階段の上からのぞいた。 痩せこけたミケがまこと見上げていた。「あっ、ミーだ。ミーが帰って来た!」
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ミケはまことを確認すると力を振り絞って上がってきた。警戒しながらも一段一段と。 …略
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キョロキョロと周りの様子を見ながら新築の香りを嗅いで、恐る恐る近寄って来た。 元の場所に、再び主人の同じ顔ぶれを確認すると、ゼンの膝に強く頭をこすりつけてきた。やっと安心したようにゴロゴロと喉を鳴らし始めた。「ミー、よう帰って来たね。」ゼンは頭を撫でた。すっかり軽くなったミケを抱えて驚いた。「こりゃずっと何も食べとらんとばい。」まことはこの時、苦労して帰ってきた猫に全身で飛び上がるほどの歓びを感じていた。これ程の喜びを感じたことはかつて無かった。
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予告編 つづく・・・ |
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ポチよ 泣かないで
T 少年編 一部紹介 |