闇からの声に苦悩する青年は
暗闇に光るかすかな光を信じて
東京での愛を捨てる決心をした

小  説 

少年編

青春編

完結編

発祥地

目 次

あらすじ

解説    表紙

小説 ポチよ 泣かないで

第V章 完結編 第1話

 
巨大な犬と猿 霊達の願い
を背負う兄弟青春回想記

第1話

第2話

第3話

著 ほのぼの童子/田口紀生

下に スクロール

第 1 話
35 愛 執
36 冷酷人間
37 再 会
38 父の死
39 子 犬
40 二つの主
41 光る輪郭
42 逃避行


スクロール


 

      愛 執 

 ひろこへの未練を断ち切って福岡に戻って来たまことだったが、教会の環境は新たな見知らぬ人間たちが集まっていた。見慣れない集団の中でまことはなじめず、心の窓を閉ざしていた。周りがまことを冷たい視線で見つめていた。忘れていた人間関係が不器用な自分に悩み、言い知れぬ寂しさに襲われていた。ひろこと暮らした安らかな幸せ過ぎた日々が頭に甦ってきては、あの頃の心地よいぬくもりが、自分にとって如何に大切な安らぎの場所だったかを、今更ながら思い出していた。まことは選んでしまった道の過ちと後悔の念とで、急に泣きだしそうに悲しくなってしまった。


          

    冷酷人間

 その後の様子を心配して、ひろこからの小包が送られて来た。東京でよく食べていたお菓子と、その包み中に手紙があった。「自分で選んだ道だから、できるところまで最後まで頑張りなさい」と書いてあった。お礼を言おうと電話をかけると、懐かしいひろこの声が聞こえてきた。その後も、ひろこからの電話が時々何度かかかってくるようになった。 だがある日、「未練と情が残るから、東京の人とは決別宣言をして、早く切ってしまうように…」と組織から厳しい忠告を受けた。 その時のまことは、人の情をあだで返す、恩知らずの冷酷な人間にならなければならなかった。組織の絶対的命令に忠実に従うしか、もはや道が無かった。
 愚かにも、まことはその「冷酷な道」を信じ込んで、実践してしまった。「ひろこさん、ご免なさい、苦しいからもう電話をかけて来ないで…」 (人間的な情を切って行くしか使命を果たせない)まことはこの時、本気でそう思っていた。ひろこは、まことの口からこんな冷たい言葉を聞くとは思わなかったのか一瞬、言葉を失った。僅かの沈黙が過ぎた後、「・・・ 判ったよ!もう二度と電話かけてあげないからねー」ひろこは泣きそうな声でやっと言い返してそのまま電話を切った。(ひろこさん、ごめんよ。ひどい仕打ちをする僕を許してくれ…)心の中で謝ったが、ひろこの悲しむ姿が浮かぶと、涙がとめども無く流れて仕方がなかった。


    再  会

 東京のひろこへの思いを捨てる決意をしたまことに、第二、第三の新たな出会いが準備されていた。 まことなおこの所在を聞き出し「放浪の果てに、また福岡に戻って来ました」と、報告の手紙を出した。 やがて喜びの返事がなおこから来た。電話の声は喜びに溢れていた。こうして一度、心が離れたひにくな宿命を背負った二人は再び姉弟の関係になった。

 ある日、なおこは高知からわざわざまことに逢いに来てくれた。かつての亀戸駅前での裏切り行為を清算し、長い間の重荷が取れた気がした。
 以前に比べて、なおこの心が優しくなっているのが嬉しかった。 (苦しい犠牲を払って帰って来て良かった…)まことは心からそう思った。
 なおこからの手紙が来る度に(今からは、彼女の支えになっていこう…)と決意をするのだった。 いつの間にかひろこを忘れる代償として、なおこに強い絆を求めていた。ひろこの愛に代わる母親のような優しさをなおこに求めていた。 だが後で判ることだが、まことを本当に解放してくれる女性は、ひろこでもなおこでもなかった。表面的なものに惑わされてばかりのまことは、まだまだ青く幼かった。

 なおこからの手紙が来る度、まことは自分が誰よりも愛されている錯覚に陥った。「僕は人前ではどうしても祈れないんです」と悩みを相談すると、なおこ「祈りと信仰生活」の本を送ってくれた。まことはその本を何回も読んでは祈りの練習を続けた。(なおこさんに、正しい信仰のあり方を教えて貰った…)と深く感謝するのだった。
 ひろこを見捨てて来た罪悪感と後ろめたさから逃れるために、より一層神秘的ななおこの美しさに関わることで、一時的にもその苦しさを忘れることが出来たのかも知れない。こうしてしばらくは、人間関係に悩み落ち込む度に、なおこからの手紙に励まされながら頑張っていた。


     父の死

 まことは時々、聖書の物語の漫画本を持って父の正喜が入院する日赤病室に見舞いに行った。正喜は、まことがまだ信仰を持ち続けているのを確認した。「もうほどほどにせなーいかんばい…」諦めたように力無く言った。父はもう息子を大声で叱る元気も無かった。それきり何も言わず、息子の差し出す本を横目で見た。外は日差しの暖かい午後だった。窓際の鮮やかな花がはかなく揺れていた。この時、もう父の命は余り残されてはいなかった。
 正喜は長い入院生活を嫌がり、家に帰りたがっていた。「それなら、正月の間だけ自宅療養してもいいですよ」と先生から特別の許しが出ると、うれしそうにチカに連れられて家に帰っていった。 だがそのまま正月が過ぎても、正喜は病院には決して戻らなかった。 こうして正喜は、自分の家で最後のささやかな「わがまま」を通し続け、ある朝、眠るように静かに亡くなった。

 長男ののりおは、父の死を弟のまことに知らせるために教会に何度も連絡したが、対応が悪くて行方を教えてくれず、仲々音信が取れずにいた。その頃、まことは直方という開拓地に派遣され、あちこちをさまよっていた。ようやく知らせを聞いて家に帰った時、既に父の息は切れ、白い布が掛かっていた。(僕は祖母の命だけでなく、父の命も心労をかけどうしで奪ってしまった。…父さん…ごめんよ、ごめんよ…)まことはやつれた父の亡骸を見るのに堪え兼ねて静かに目を閉じた。父の霊が何処にいるのか必死に捜し求めた。 その時、ふっと父の顔と祖母の顔が並んで浮かんできた。ゼンの霊と父の正喜の霊が一つに重なって自分を包み込んだような気がした。(まこと!俺のことはいいから自分の道を貫いて行け!)(まこと、がんばれー!)父と祖母は二人とも、まことを許して励ますように、笑顔でまことの心に浮かんで現われ、大きくなって包み込み、やがてまことの背中の方に消えていった。

 葬儀が終わって、親族たちが家に集まっていた。まことは自分を見つめる親族たちみんなの目が敵対している感情を読み取った。まことの姿は兄に比べると、思想や宗教問題で心配ばかりかけて、人間としてもみすぼらしく親不孝な最低の人間失格に写っていた。のりおも、評判の悪いにみんなの前ではよそよそしく対応した。父の「死に目」に間に合わなかったを、もはやかばってやる何の条件も無かった。

 いたたまれなくなって、二階の部屋に逃げるように上がると、従兄弟たちがコタツに集まってトランプゲームをしていた。「あ、まことちゃんも入らんね」一緒にやろうと誘われるままに入ってゲームをしていたが、かつてまことの上司だった従兄弟の信之が正面にいて、まことの顔を軽蔑の眼差しで冷ややかに見ていた。突然、信之はみんなの前で大声でなじった。「なんやー!お前は!・・・」にこやかなゲームの団欒の部屋が、突然中断し、緊張した空気に変わった。信之は、かつて思想の問題を起こしたばかりのまことをチカから預かった。左翼から立ち直らせる為に、(まことを『宗教の道』に関わらせることは良い機会になるかも知れない…)と考えて、「二ヶ月だけやってみてから報告するように・・・」という約束をさせて、特別に許して教団に送り出した筈だった。



 だがまことは、人が今か今かと待っていたのに、平然と約束を破ったまま教会に行ったきりで、そのまま音信不通になっていた。その事で信之は完全に面目をつぶされていた。まこと信之の顔を見たときに、何をさて置いても、あのときの約束を破ったことを真っ先に謝るべきだったが、この道が本当に正しいのかさえの結論がまだ出せず、曖昧な状態のまま、依然として明快な返事ができる状態ではなかった。
 この時、まことは「人の道」さえも見失っていた。この「宿命の道」を行くために、数多くの人々の心をズタズタに切り裂き、受けて来た愛情と恩をことごとくあだで返して裏切って来たのだった。

 なにごともなく、ゲームに参加していると、突然、奇声があった。「何やー、お前は!どうしようもない奴だ!」人生の落伍者を見るような、軽べつと憎しみを込めた眼差しでまことを睨んで、突然大声で口汚くけなした。 だがまことは不義理をしたことを思い出して、そのとき何も言い返せなかった。
従兄弟達の囲む前で痛烈に批判され、恥ずかしさと屈辱でただ涙をこらえてうつむいた。(言われなくても判っているよ…)心の中でつぶやいていた。 かつて体を張ってまことを必死にかばってくれたゼンの姿はもうそこにはなかった。
 だが信之は更にまことを追いつめ、人前でうまく喋れない性格の欠点をあげて、存在そのものを否定する言葉を罵倒して浴びせた。遂に何かが壊れたように、まことの目から大粒の涙が溢れるように流れ落ちた。あまりにもひどい屈辱の言葉のために、気が変になり、苦しくて死んでしまいたい気持になった。コタツから離れて祖母のタンスの前でうつむいた。

 その時、まことの脳裏に何かの映像がふっと浮かんだ。祖母のゼンのタンスの下から3段目の小さい引き出しの中にある記念写真が現れた。二見が浦を背景にして並んで写った義勇兵たちが大きく脳裏に広がった。微笑む兵士たちの真ん中にゼンの姿が突然現われたかと思うと、ゼンの顔だけが急に大きく近づいて来た(まこと!、頑張れー!)ゼンは叫びながら、まことの体を包みこむように消えた。 

 (何だろう…?)まことはあふれる涙を拭きながらも不思議に思った。従兄弟たちの大勢いる中で、まことはタンスの傍でうずくまったまま、長い耐え切れないほどの沈黙の時間が流れていた。 しばらく経って、姉ののぶ子がやって来た。「あんた、もう泣かんで、涙を拭いてそのまま、もう寝なさい」と優しく毛布をかけた。

 そのまま寝てしまったまことは、翌日目が覚めたが、気まずさで身の置き所が無く、全く起きあがれなかった。(昨夜、頭によぎったものは何だったのだろうか…?)目を閉じて考えていた時、従兄弟の一人が馬鹿にするように、ふざけて何かものを投げつけた。まことはあざけりの言葉以上に、その行為が許せなかった。大切な妄想の時間を邪魔する人間に対して、激しい憎しみを感じた。投げつけられた物は小さな物だったが、まことの誇りの全てを打ちのめしていた。(『目的のためには、肉親の命を犠牲にしても構わない』という非情なる契約、自分の「闇夜の誓い」など、どう逆立ちしても到底この世の人達には受け入れられないだろう…)この日、今井家の親族の誰にも悟れない、自分だけに与えられた特殊な「秘密の使命」を痛切に感じていく。 まことは、この日を境に自分の中に、何か別のものが入り込んだような感覚になった。まことは再び教会に戻っていたが、今までの生き方ではない、別の新しい「宿命の道」を歩み出そうとしていた。


    二つの主

 まことは親族と決別の誓いをして、再び教会に戻った。経済部隊の一員として、あちこちの町に降ろされ、歩き回っていたが、今までの生き方ではない、別の新しい「宿命の道」を歩み出そうとしていた。

 ある夜、知らない田舎に降ろされて物売りして歩いていた。この日は、体の調子が悪く、全く実績が出なかった。身も心もヘトヘトに疲れてしまっていた。夜空を見上げると満天の星が煌いていた。意地になって闇の中を歩いている自分に気づき、急にたまらない虚しさを感じた。夜の海岸の浜に抜け出て、月夜の星空を見上げて、たたずんだ。(こんな毎日が、全てを捨てて犠牲にしてやる価値ある「主の訓練」なのか…)

(そうだ…確かあの時、私はこの言葉で、激しく心が揺れ動いたのだ…)入信時の頃を回想していた。「聖書のみ言葉」から伝わってきた、強いメッセージ。全身に電撃が走る「使命感」を思い出した。(私は「主の訓練」を受ける為、この「教団」に入らなければならない)…と直感的に閃きを感じた。あの閃きは一体何だったのだろうか? あの頃感じた「新鮮な喜び」も、東京で闇に誓った希望も決意も、今はもう消えてしまった。
 
暗闇で、この聖句を唱えてみた。だが「主の訓練」の言葉は、もはや色あせ、感謝できなかった。(主よ、私はもうこの「主の訓練」が喜ばしく思えなくなりました。目を閉じても開けても、全て深い悲しみの闇しか見えません。この道がやがて、鍛えられし者に「平安な義を」結ぶなどとは到底思えません。この組織での「主の訓練」は、今の私には不義と不安しか生み出しません。東京の思いを捨ててきた意味が見えません。)
 
まことはこの時、「主の訓練」の意味を勘違いしていることに気がつかなかった。主の混同があった。入教する時は「教団」を、神の用意した「訓練場」と確信して献身したが、中で活動している内に「」が地上の教祖に降臨して、「」自ら率先して訓練してくれる感覚になっていた。自分を導く「」と、教祖を導く「」の二つを混同して、いつしか「訓練」の意味を取り違えていたのだった。

夜空に向かって祈っていた。(毎日「嘘つきな物売り」で闇を歩くことが主の訓練なのですか?)(私はもうこれ以上一歩も進めません。 「主の訓練」を重んじる「意味」が判らなくなりました。)(教えて下さい。この組織を去ることをどうかお許し下さい)まことの脳裏に左右二人の主が現れた。(決して訓練を拒絶する訳ではありません。私だけ特別に他の「訓練の道」を行かせて下さい。)
 
(今の闇を卒業できるなら、私は孤立しても構いません。たとえ一生涯、孤独でも受け入れます)「・・・」(主よ、答えを聞くまで、いつまでもここを去りません)「・・・」(どうか答えて下さい)「・・・」決死の覚悟で、いくら問いかけても「答」はなかった。長い「沈黙の時間」が虚しく過ぎていった。夜明け前になり、失望と空腹、疲れで目眩が起こり、薄暗い砂浜に崩れ落ちるように突っ伏した。
 
「私はこの道を離れます。決めました…承諾下さい」その時、左側の主がフッと消えた。「!」伏せた頭に仄かに主の光が照らし始めた。組織を超えた遥か高い次元にその主の霊を感じた。「出よ。ここでの訓練は全て終わった。あなたはここを出て、次の備えられた道に進みなさい。」組織への決別を示した時「卒業」と答があった。後で判るが、これが「主の訓練」の意味だった。
 
まことは、主が用意された卒業試験、暗闇の主と決別する、「迷いの戦い」に勝利したのだろうか?「主の訓練」とは、組織の教義を踏まえた上で、次の「新しい道」が待っていることを示していた。月と星空の薄暗い道に、夜明けの光が仄かに射し、やがて橙色に輝く暖かい曙が照らしていく、この光景はまことの記憶から一旦封印されたが、後々、新たな段階での「出発の印」となって蘇る。
 
暗闇を通過したのは、やがて「真正の主人」を迎える時に必要な「光の道の備え」の為である。いつか「本番舞台」が来た時には、教義に隠された本当の「選民の備え」の雛形が必要となる。「完全投入せよ!」という性急な仮の主人の言葉に惑わされ、備えるべき力を今、出し尽くしてはならない。今はそのまま受け取らず、来るべき本番の舞台で発揮する為にしまっておくべき。
 
まことが従うべき「主」は仮の主人ではなく、「闇に留まらず次へ進め」と示す「本来の主」だった。まことは大切な教訓を得た。組織で用いる「神の目的・命令」は、訓練の仮舞台のセリフであって、本番舞台ではない。虚しい嘘つきの物売をしにきた訳ではない。真理を極める為に来たのだ。まことは暖かく包み込む「主の気配」を感じた。「あなたはここを卒業し、新たな信じる道を貫いて行きなさい。」
 
我が内なる主の声は、新たな「孤独の旅立ち」を促していた。「教義」ではなく「聖書」を通しての誓い。聖句の奥にある「主の霊」との出会いに、懐かしい「真正のメッセージ」を探し当てた。いつしか混同した「二つの主」を「仮と本」とに明確に分ける課題は、まだ先に残されていたがひとまず「仮」を卒業し、「本番舞台」に向けて備えていく孤独な「新しい道」が動き出していた。
 

     光る輪郭


その頃、教団では「祝福祭典」が近づいていた。その儀式は教祖を中心に、信者同士が家庭を持ち、生涯捧げることを主に誓う契約だった。理想相手と出会い、互いの意思の結婚観ではなく「教祖が決めた相手と家庭を持つ」という押付け的な結婚観に不安と拒絶感を抱いていた。(これ以上留まると逃れられなくなる…)と焦るような思いが密かに「脱会の時期」を急がせた。 

(早く脱け出そう)と思っている所に、今まで遠くにいた信者達が親しく近づいていた。兄弟以上にふれあう心が暖かく感じた。同じ価値観を持ち、共有の目的に向かう仲間の居心地の良さか、いつの間にか孤立から大勢の仲間の中にいた。慣れてきた場を離れがたくなった。自分から縁を切るなど思いもかけない位に尊く感じた。「孤立しても構わない…」と誓ったことを忘れていた。

大勢の仲間に包まれると、あれほど「決死の覚悟」で誓ったことさえ見失ってしまうものなのか?孤立してた自分と集団に居る自分の一体どちらの心が正しいのか。静かな渦巻きに吸い込まれて、行くべき方向を見失い、闇を脱け出す必要性も忘れていた。一人離れて「孤立する道」よりもみんなで渡れば怖くない赤信号と同じ、不法で危険な道でも「滅びの道」が心地よく感じられた。
 
集団の中で(迫り来る闇から出よ)という声は聞こえなくなった。「脱会の決意」が次第に薄れた。いつの間にか組織への依存的体質に包まれ、「約束」を忘れて背いた自分にも気づかなかった。教団の中しか通用しない価値観をそのまま受け入れ、有りもしない幻想に判断を狂わせていく。脱け出す理由機会も忘れていた。「脱会の意思」が麻痺してほとんど半永久的保留になった。
 
単独行動が難しい集団の渦中に巻き込まれ、次の道へと進むという「課題」は遠のいていった。教団に漂う霊的な柵が包囲していた。闇が体全体を覆ってしまうと何も感じなくなってしまった。ある日、誰かのつぶやくような気配を感じて、集団から一人離れて、公園のベンチに腰掛けた。目を閉じた僅かな時間に、内なる心の声が聞こえてきた。(闇を出よ…孤立への誓いを果たせ)
 
(闇を出よ?…孤立の誓いを果たせ?…)最初は何のことか意味が解らず、遠い言葉に感じた。(…?)(闇から出なさい…「孤立な道」でも一人で行くと約束した誓いを思い出しなさい…)久しぶりに、なつかしい言葉が頭の中をかけめぐった。(ハッ…)忘れていた記憶が蘇ってきた。闇、出る、孤立、道、約束、誓い…あの月夜の砂浜に立つ自分の輪郭が微かに光って現れた。


 
--------------------
(そうだ…私は集団に戻ってから、いつしかあの自分の「輪郭の光」を見失ってしまった…。)共に訓練を受ける仲間達と同化してしまい、「自分の道」を守る「防壁の光」が消えていた。集団の中でも自分を見失わない輪郭のバリヤ」を思い出すと、体が仄かに光り出した。(ああ…大切な感覚を忘れていた…確かあの時、私は必死に何か?を祈った記憶が…?)
--------------------
 
(ああ、忘れっぽい私をお許し下さい。もう決して「自分の輪郭」を見失わないようにします)慌てて弁解をしていた。(あの時、私が願ったことを、忘れずに覚えておられるのですか?)(契約はまだ活きていたのですか?)確か…あの時、私の願いは…孤立する…別の道…孤立しても別の「光の道」を進ませて下さいと必死で祈った…(そうだ…今思い出しました)
 
自分では仲間と共に「光の道」を歩いているつもりでいたが、実は「暗闇の道」を歩いていた。行くべき道を見失ってしまう程「深い闇」に包まれていたことに、ようやく気がついた。自分が闇の中にいても気がつかない盲目状態の(「闇」から出なさい)という意味がようやく解った。(闇から出なさい。孤立しても「光の道を行く」と約束して誓ったことを果たしなさい)(…はい)
 
(あなたが私と交わしたあの契約はまだ活きている…孤立を恐れず「光の道」に進みなさい。決死で祈った時にも何も答えなかったのは、「二つの主」を選り分ける戦いに、あなた一人の意志で勝利しなければならなかったからです…そして、最後には自分で「行く道」を決めた…その後「闇」に包まれた訳は「集団」と「孤立」の両方の闇を見分ける課題を示す為である。)
 
ここを去る前に、「闇に置き去りになる群れ」の儚さを、あなたは先に体験する必要があった。「闇の道」を「光の道」と思い込んで貫く彼らにも、いつか正しい「道の真相」を説明しなさい。惑わしを受け、大切なものを失い、歯噛みする盲目の群に、正しい「光の道」を示しなさい…「滅びの群れ」と一定距離を置き、備えられた次の「新たな道」に進むべきことを伝えなさい…
 
(闇に置き去り…滅びの群れ…正しい「光の道」の備えと真相…?)目を閉じて唱えていた。(今、唱えた「未来の課題」は、まもなくあなたの記憶から消える…。群れから脱け出す前に、あなたの頭の引出しを封印しよう…いつか忘れ去り…再び眠りから覚める時が来るまで…。彼らと別れて「孤立の道」を進み、人知れず「光の道を備える」為の雛形の歩みをしていく…)
 
(その時が来るまで、封印した引出しを開ける「カギ」は、道案内役をする「ある者」に預ける…「道案内の明かり」の役割をする「不思議な心」を持つ使者に出会い、一緒に脱け出しなさい。「その者」はあなたの足元を照らして、引き返すことの出来ない所まで導いてくれるであろう…その後、使者は離れ、あなたは約束の「孤立の道」をゆく。だがいつか再び出会う時がくる…)

 
「道案内の明かり」となり、次の舞台へ導く「不思議な心」の使者を探して共に発ちなさい。(いつまでも「仮舞台」に留まると、そこはやがて恐るべき底知れぬ深い暗闇の舞台となる。「滅びの群れ」に永く留まっていてはならない。長居し過ぎると卑屈と腐敗が始まっていく…)「はい…」瞑想から覚め、ふと吾に返った。闇にいた自分の頬を両手で叩いて立ち上がった。

密かに脱会する決意をして戻ったまことに、思いもかけない何者かが…少しづつ近づいていた。(一緒に脱け出す使者の「不思議な心」ってどんな心なのだろう…)ぼんやり空想していた…

 

     子 犬

 まことは、この日を境に自分の中に、何か別のものが入り込んだような感覚になった。まことは再び教会に戻ったが、今までの生き方ではない、別の新しい「宿命の道」を歩み出す準備をしようとしていた。 (この教義のどこが間違っていて、主が言われた「滅びの道」になるのだろうか?世間に受け入れられないのは何故だろうか…?)教義に隠された矛盾点を本格的に調べ始めていた。(これからの自分の生き方をしっかりと考え直し、この道を捨てる明確な結論をキチンと出さなければならない…)まことは、洋服がたくさん掛かっている更衣室の奥に小さな座り机を置いて、自分だけの仕切られた空間を作って、ひそかに一人で聖書を深く調べるようになった。


 
 みんなが寝静まったある夜、まことが更衣室で考えごとをしてると、ドアの入口の外から何かゴソゴソする気配を感じた。振り向くと、カーテンから子犬が顔を出して覗いていた。(あ…、おいで!)子犬は声をかけられると嬉しそうに尻尾を振って部屋の中に入って来た。まことはその日からご飯の残りをあげたり、夜には子犬と一緒に寝袋に入ってに寝るようになった。人間より犬を大事にするまことを見て、みんなが「良くない」と言い出した。ある日誰かが、子犬を車に乗せてどこかへ捨ててしまった。この捨てられていなくなった子犬は、その後長い月日が過ぎて、すっかり大人になって再び再会する日が来るようになる。

 そのころ、組織に「かずよ」という小柄の女性がいた。かずよは、まことが子犬を可愛がる様子を、微笑ましく見ていた。いつも孤立して寂しそうにしているまことが気になり、微笑みを忘れたまことに笑顔を取り戻してあげようとまことの顔をじっと目で追うのだった。
 ある日、まことは自分の横顔を見つめている誰かの視線を感じた。振り返ると小柄な女性がニコッと微笑んだ。自分の密かな考えを見抜かれた様な気がして心臓が「ドキン」と鳴り、慌てて平静を装った。まことかずよと目が合った。ニッコリ笑って心の底からまことを受け入れていた。まことはこの小さな女の子が、自分のことを心配しながら見つめ、体を張って受け入れてくれている、優しく広い大らかな心を感じた。

 彼女とは以前、台所で話したことがあったが、教義が頭に入っていない「不可解な子」だった。強引に勧められて入信したものの、特殊な心の為に、教団の外で経済を支える立場になった。(ここで頑張っていればいつか「祝福」が受けられる…)と、ただ、それだけを希望に抱き、日々地下商店街の露店で装飾品販売をして、毎日相当な売上げを出し組織の経済を支えていた。

 彼女は当時、組織の経済を一人で支えて働いていた。毎日相当な売り上げを上げていたが、どのくらい稼いでるのか聞いても教えても貰えず、渡されるひと月のお小遣いはほんの僅かだった。 「かずよちゃん、いつもよくやってくれるねー」と上司に褒められる度に、嬉しくなって尚一層頑張っていた。だが実のところ、彼女は組織におだてられて、いいように利用されていく存在でしかないことを薄々感じ始めていた。

 かずよは、教理の内容が全然判らないのに、強く勧められるまま、教会に入るハメになってしまっていた。組織の活動を大切なものと教えられ、(たとえ無報酬でもみんなの為に支えよう)と、ただただ真心を尽くして頑張れる女性だった。かずよは理論的なものは全く苦手で、「忠誠心」と「思いやり」の心情世界だけで生きていた。

 かずよは意外な悩みを抱えていた。それは教義がよく判らないのに祝福を受けようとする自分が他の信者の感情を逆撫ですることに悩んでいた。それは偶然、ある夜の帰宅時に、部屋の扉の前で聞いた自分への「陰口」から「脱会への決意」を強く持ったという。かずよは少し前、教会の人たちが話す自分に対する陰口を偶然に聞いて以来、大変ショックを受け、ずーと気になったまま考えていた。  
 ---  回 想  ---
かずよさんは、教理も何も全然判ってないのに、ただ訳も判らず忠誠心だけで働いてるのよ。神の摂理が判らない人は、本来ここに居る必要はないのにね…」 その陰口の言葉はかずよの頭の中を何度も駆け巡った。(私はこの組織にはふさわしくない、利用されるだけの存在なんだわ…。もし脱会の機会があるならば、何とかしてここから抜け出したい…)と、ずーっと考えるようになっていた。
「あの子はここに居る必要がない人よ。教義が全く理解できない人が、祝福を受けても何の意味もないわ」(…ああっー)…かずよは思い出す度に両手で耳をふさいだ。
(私は…祝福受ける必要のない人間なの?…どんなに実績を出して奉仕しても意味がないの?私のような無知で中途半端な人間がここにいても、誰もが不可解で迷惑な存在だけなんだわ…局長はいつも褒めてはくれるけど、売り上げを出してるから、うまくおだてられているだけかな…もういい…私は、祝福なんかもう受けなくても構わない。もう決めた、今すぐここから出よう…)
だが…一人で離れる勇気も無く、心細い未来に不安を感じながら、仕方なくその機会が来るのをじっと静かに待っていた。
 
(どうしても…私一人ではここを脱け出せない…神様、教えて下さい…私はどうしたらいいのですか?どんな人でもいい、何でもしますから、どうか私をここから連れ出してくれる人を遣わして下さい。)「娘よ…その願いを聞き入れよう…共に脱け出す者がもうすぐ貴女の前に現れる…誘って共に脱出しなさい」「目には見えないが、貴女だけには見える印として、暗闇に仄かに「
光る輪郭を放つ者が現れる…」
 
「その者が「次の舞台」に向かうまで絶対に引き返せない所まで「道案内」をしなさい」(はい)「あなたを拘束したのは、その者を過去に戻らせず、間違いなく「次の道」へと導かせる為です」(判りました…感謝致します。信じてその人を待ち、一緒に連れ出してきっと道案内致します。)
…彼女は、「脱会への強い意志」を抱きつつ、その機会を、じっと伺いながら待つようになった。


     逃避行

 まことは、今まで関わってきた人たちから受けた恩をあだで返し、ひろこや親族たちに失望と悲しみを与え、恨みと憎しみを受けるのも構わずに、全てを決別して歩いてきたが、今頃になって後悔の思いが出始めていた。(大切な人情をズタズタに切って、まで、行こうとするこの「非情なる道」は間違いかも知れない…)と思い始めていた。

 そのような迷いの時に、まことかずよに出会った。 かずよまことより二つ年下だったが、人が絶対に嫌がって避けることを、自分から手をあげて、あえて進んで引き受けたり、時々突飛な行動をする事があった。まことの目にはその無茶苦茶なところが、摩可不思議な存在として写っていた。 (道案内する不思議な心…)を探していたが、まさか、彼女の存在とはまだ結びつかなかった。東京のひろこの面影を思い出して、(もしその使者が見つからなければ、東京に帰ろうかな…)と思ったりしていた。色々と考えているまことの本心を知ってか知らずか、かずよは次第に近づいていた。

 目を閉じて話す癖の彼女の姿があった。言われた通り、暗闇に「光る輪郭」を感じようとしていた。新しい人が出入りする度に目を閉じて(「仄かに輪郭が光る者」が現れないか…)と探していた。その頃、「道案内する不思議な心」を探していたまことが、彼女の前に現れた。彼女は目を閉じて、「印」を探した。一瞬の闇の中に、仄かに「光る輪郭」が見えた。(あ、この人だ…私が連れ出す相手は…)
 
 一方、まこと「不思議な心をした道案内人」が、かずよだとは、すぐには気がつかなかった。探すべき明かり、封印の記憶を開ける(カギを預る人)だったと気がつくのはずっと後になる。(何だろう…?言葉を超えた仄かな灯火の温もり、私を暖かく包み込んでしまう謎の心は…)(「道案内の明かり」と「不思議な心」…?)…微かに予感して確かめる為に近づいていった。
 

 ある日、村を訪問して署名活動することになった。まことかずよと二人でペアを組んで、田舎道に降ろされて家を回った。何軒か家を廻る内に、何となく心地よい感覚を覚えていた。お互いの心の背後で「歓喜の霊」が湧いて来るのを感じた。互いに自分を解放してくれる「運命の相手」に出会った喜びの思いを感じていた。
知らない村の田舎の畦道を歩きながら、二人だけが理解できる「不思議な会話」をしていた。(あの…僕の…道案内してくれますか?)(はい!連れ出して下さい…道案内します)(あ…)予感した「答え」だったが驚いた。彼女は教義や信仰を、遥かに超越した心境に立っていた。大勢の兄弟姉妹の中で、ただ一人彼女は「天衣無縫」と言うべき純粋な心を持つ、特殊な不思議な女性だった。
 
突飛過ぎる答えに逆に面食らっていた(この子の感覚に案内を任せても大丈夫なのかな…)彼女は教義の内容が全く入らない、天衣無縫の「不思議な心」をした特殊な女性信者だった。(でも、この子かも知れない…主が備えた、私の行くべき道を知っている不思議な使者は…。「道案内の明かり」、次の舞台に導く「不思議な心」の使者に、私は出会っているのか…?)

何軒か家を回って署名を集めていたが、二人とも途中でやめて落ち合う場所に早めに戻った。二人きりで話せる機会は、今しかないことをお互いに感じていた。(署名カンパは二の次だ…)回収ワゴン車がくる時間まで、道端の石に座り、お互いの感じていることを探りながら話した。彼女の口から、思いもしない「不思議ないきさつ」と「不可解な立場にある身の上話」を聞いた。
 
帰路のワゴン車の中、二人は並んで座った。窓の景色を見る彼女の手をまことは無言で触った。彼女は驚き一瞬「ピクッ」と手を引っこめかけたが、すぐまことの手の中に戻って握り返してきた。お互いの絆を求める心が手に伝わった。まるで「灯火」が手の中にあるように暖かい手だった。(もっと接近して彼女の「謎の心」を知りたい…)恋愛の情というより、彼女の「純真な心」が、まことにはどうしても手に入れたい「宝物」に思えた。
 
みんな朝早くから田舎の家々を歩き回って疲れてるのか、ウトウトと居眠りをし始めた。彼女も居眠りしながらまことの肩にもたれてきた。まことは眠ったふりして、彼女の髪の毛に頬を寄せてみた。永い帰路の車内で二人は寄り添うように座り、指を絡めながらお互いの気持ちをさぐっていた。流れいく田舎の景色、心地よく揺れる二人の体の間から、暖かい炎の温もりが広がっていった
 
お互いの背後の何かが一つに重なり、歓喜の世界に変わっていく不思議な感覚に包まれた。自分を包む背後の霊界が、歓喜にあふれて広がり、心の底から喜びが溢れてくるのを感じた。目を閉じて彼女の手と頭に触れていると、ふと幼い頃の記憶が浮かんできた(懐かしい感触…昔…行方不明の猫がやつれて戻ってきた時、全身喜びに包まれてミケを抱いた、あの記憶…)
 
餓死寸前で帰ってきた痩せた猫を抱えて感じた、絶望の冬に耐えた切なさと愛しさの混じった感触だった。安らぎの家に戻れる日を、ひたすら待ち続け、寒空の下、空腹で外を彷徨う猫の姿が浮かんだ。飢えと寒さに耐え、ようやく元の家の飼い主の膝の上に、辿り着いた安堵感…(間に合って良かった…)その時…横で疲れて眠る彼女の姿と、ミケの忍耐の意味が重なった。
 
忍耐猫の「記憶と意味」を彼女が引き出していた…「閃きのカギ」を預かる存在の予感がした。冬の闇から、主の待つ新居に戻るまでの「猫の忍耐」が示す「課題」を悟る最初の閃きだった。(不思議な子だ、きっと…この子と一緒に脱け出して、次の道へと進んでみよう…)果たして…、「不思議な心」道案内の明かりを手にして、密かに「闇の道」から脱け出せるのであろうか?

 やがて周りの者が、二人のことを、恋愛を禁ずる組織の教えに背いた者と見るようになった時、二人は密かに示し合わせて脱会する手はずを決めた。

 ある日、まことかずよを連れて汽車に乗り、実家に向かっていた。まことは窓から海を見ながら暗かった学生時代のことをかずよに聞かせてあげた。旅の気分になったのは久しぶりだった。かずよまことの実家に連れて行って貰えるのが嬉しかった。だが車窓からの海辺の家並みを見たとき、かずよはこの地域全体に何か言い知れない、切ない淋しさが漂うものを感じた。車内の壁に貼ってある糸島の地図が(何かの動物の形をしているわ…)と思ってぼんやりと見上げていた。
 まこと母のチカのいる実家に帰り、かずよを引き合わせ、今までのいきさつと事情を簡単に話した。チカは、かずよのおかげで息子が教会から離れることを考えている事を喜び、密かに感謝した。

この日二人はかつてゼンの使っていた二階の部屋に泊まることになり、さんざん歩き疲れていたので布団を並べて敷いて早めに床についてすぐに眠った。深夜、仕事から遅く帰って来た兄ののりおは夕食をとりながらまことが脱会する話を母のチカから聞いた。食事を終えて階段を上がってきた。兄のりおは自分の部屋に入ろうと襖の前まで来た時、二つの布団のこちら側にいる見知らぬ不思議な雰囲気の女性の顔と目があった。「おっ」驚いてしばらく見つめたが、すぐそのまま自分の部屋に入り襖を閉めた。かずよ初めてのよその家に泊まる緊張感でなかなか寝つけずにいた。翌朝早く起きだした兄のりおが部屋から出るとき、かずよと再び目が合った。兄がかずよを見たのは布団に入った状態の顔だけで、夜と朝の二回、ひと目見ただけだった。

 
 まことに借りたお金で小さな部屋を借りた。夜になるとみんなに気づかれないように、かずよの荷物を少しずつ何回も分けて運んだ。 その途中、ふとなおこの顔が浮かんだ。(なおこさん、すみません。また期待を裏切ることになりました…)だが何故か、それほど大きな負債を感じなかった。天が備えられた宿命の出会いを自然に受け入れていた。

 ある夜、二人は脱出を決行した。闇夜の逃避行のスリルを感じながら、あてもない未来の世界に向かって、雑踏の中に消えていった。

 ――  おわり ――
 
その後、二人は束の間の幸せな時を過ごすが、皮肉な運命の糸に操られ、別々の道に引き離されてしまう。やがて「二人の出会い」が何を意味していたのかを悟っていく時、再び犠牲を払いながら、互いに失った全ての条件を取り戻して行くようになる。
 それは「正しき主人ポチの使命」というテーマで演じられる、日本歴史の謎解きのために選ばれた「ヒナ型の出会い」であった。

青年となったまことは、やがて自分の青春時代を振り返るとき、かつて暗闇の誓いで約束した非情の契約のことを、どんな形で回想するのだろうか? 驚愕する使命が見えてきた時、果たしてどんな気持ちで全ての工程をことごとく通過していたことに気がつくのだろうか。

小説ポチよ 泣かないで V完結編 第1話 おわり

 

あとがき
まことの課題は伯母のシマと出会うことから、親族一同の課題へと新たな高い次元となっていく。
まことの抱く英霊のポチの課題@と、伯母シマが残した自叙伝から導きだした家訓Aテーマへと…
放浪し彷徨いながら辿り着いた先は、伯母
シマや母チカの実家の祖父甚七暗黒の歴史であった。
まこと伯母シマの抱く共通の人生課題は、歴史的封印を解く新たな「光への旅」へとなっていく。

第1話

第2話

第3話
つづく

大なを背負う青春の回想記
ウスの訓練よ 泣かないで」
 m(_ _)m  なぞとき講座 へもどうぞ

小説 ポチよ 泣かないで

第三章 完結編 


悲願ウスキネ変身
青年を訓練を生み出す
灰へ
神饌として導く天界協助

苦悩の青年は暗闇に誓う 英霊と共にウスの中へ導かれていく
英霊の悲願は戦後世代を導いて
閃きの宝を出させるウスの訓練
に導く役割の天界協助であった

後編予告 
全ての道はなぞときに必要な通過すべき宿命路程であった

 上に スクロール

 
inserted by FC2 system