青年は自分を「ポチ君!」と
呼ぶ不思議な子と別れていく
偽の主に惑わされ見失う報い

小  説 

少年編

青春編

完結編

発祥地

目 次

あらすじ

解説    表紙

小説ポチよ 泣かないで

V 完結編 第3話

巨大な犬と猿 英霊の願い
を背負う兄弟 青春回想記

第1話

第2話

第3話

著 ほのぼの童子/田口紀生

 下に スクロール

物語は、弟の青春期の記憶を元に想定したフィクション小説

第 1 話
35 愛 執
36 冷酷人間
37 再 会
38 父の死
39 子 犬
40 二つの主
41 光る輪郭
40 逃避行
第 2 話
41 兄と妹
42 祖母の気配
43 闇夜の なおこ
44 なおこ の悩み
45 教義の奴隷
46 闇夜の二人
47 消えゆく宝
第 3 話
48 孤 独
49 別 れ
50 天の誓い
51 正しき主人
52 閃きの時
53 主人の使命
54 謎解き


       孤 独

 かずよが去ってしまってから、まことは狂おしいほどの孤独に襲われていた。 火が消えたような底無しの暗闇に沈んでいた。 光を失ってしまった時、無口だったまことの心をいつも明るく燈してくれていたかずよの存在が、自分にとって何よりも大切な「真実の太陽」だったことに初めて気がついたのだった。だが今となってはもう全てが遅かった。 (かずちゃん、かずちゃん、どうして僕をおいて離れて行ってしまったんだ…) うつ伏せになったまま、涙が流れて止まらなかった。孤独な寂しい月日が流れていった。まことは全てを忘れようとして、筆を持ち仕事に一心に打ち込んだ。
 まことにはもう、文字を書くことでしか淋しさを忘れるすべは無かった。毎日、深夜まで筆を持っては腕が痛くなるまで、文字の練習をして苦しい孤独な時間を紛らわした。

 やがて半年が過ぎた。まことは勤めていた会社を辞め、アパートを拠点にデザインの会社を設立し独立した。…と言っても、あちこちの不動産や板金屋に名刺を配って廻り、文字書きの仕事を少し貰って、どうにか一人が食っていける程度だった。

      別 れ



 なおこは、いよいよ結婚して家庭を持つことになった。新幹線で旅立つなおこと最後の別れをするために博多駅に逢いに行った。 時間が来るまで、二人は駅の待合室のベンチに座って待った。「今井さん、私ね…今すごく心が不安なの…」なおこは苦しそうな表情で、すがりつくような目でまことにつぶやいた。「…」 まもなく行ってしまうなおこの横顔は、いまだ苦痛の中でもがいていた。まことは痛ましい程に悩み続けるその美しい横顔を、心の中に焼きつけた。 改札口の前まで歩いて、いよいよ最後の別れの時が来た。(今、何か言わなければ僕は一生後悔する…)まことはあせった。(なおこさん、行かないで…僕と一所に暮らして下さい…とそう言おう。一か八かだ・・・)「う・・・」だがそのとき、喉に何かがふさがり声が全く出せなくなった。
 そんな口ごもるまことの唇を、しばらくすがるような目で見つめていたなおこだったが、やがて諦めてしまったように、ついに寂しそうな表情のまま「じゃあ…、今井さん…、私行きます。さようなら…」「・・・う・・・」そのまま改札口からゆっくりと消えていった。


 彼女を見送ったあと、駅の階段を降りながらまことは、苦しみに似た深い悲しみに襲われていた。最後までなおこを救ってあげられなかった自分が不甲斐なかった。(こんな理不尽なことがあっていいのだろうか…?)あまりにもなおこが可哀相だった。潰れるくらい胸が痛くなって、切なくて切なくて泣いてしまっていた。このときまことは、自分がなおこのことを本当に死ぬほど愛していることに気がついた。だがもう、どうすることも出来なかった。

 一週間過ぎた頃、夜中に電話が鳴った。「はい、もしもし」「・・・」電話の向こうから、すがりつくような、か細い声がやっと聞こえて来た。「・・今井さん…」苦しそうななおこの元気のない声だった。心がまだ迷っていることを感じた。 「ああ、なおこさん…」「今井さん…私ね…」「はい・・・」なおこは次の言葉が出なかった。ためらいながらそのまま沈黙していた。「なおこさんは、今幸せですか?」まことは不覚にもいきなり変な愚かなことを聞いてしまった。なおこは無言のまま、それきり何も答えられなかった。「なーんだ…そんなに嫌だったらそんな結婚なんか辞めたらいいのに…」まことはつい突き放すように乱暴な言葉を吐いていた。
 この時、彼女は愛情を感じない婚約者に、貞操を許すことがどうしても出来ず、闇夜を逃げ回り、最後の救いの声を求めてやっと電話して来ていたのだった。まことなおこが救いを求めて、何かの優しい言葉を求めてすがっていることをやっと悟った。 つい乱暴な言葉を口走ってしまったことを強く後悔していた。(急いで何か優しい言葉を言ってあげなければ…)と考えて救いの言葉をあわてて捜していた。
 だが突然電話はそのまま「プツリ」と切れてしまった。 まことはとうとう最後まで、本当の気持ちを打ち明けられず、悪魔の餌食になっていく彼女の魂を救ってあげられなかった。最後に残された機会さえも自ら放棄してしまった自分がただただ情けなかった。

 後から考えれば、二人とも教義の呪縛にかかっていたとはいえ、まことの真剣な愛の力でなおこの心を支えてあげ、「虚偽の道」から無理やり脱線させても構わなかった。だが何も出来なかった自分のふがいなさに、たまらなく悔しい思いを抱いて歯噛みするだけだった。

 その日以来、まことの夢の中に、黒い悪魔が笑いながら現われては、なおこの体を貪るようにいたぶる「悪夢」ばかり見るようになった。いくら逃げ廻っても、最後は悪魔に捕まって蹂躙されてしまうのだった。苦痛に歪むなおこの逃げようともがく姿や表情が痛々しく浮かんでは消えた。 どうしようもない無念の思いにさらされ、切なくもだえる苦しい夜が毎日続いた。 それでも(いつかなおこが、この呪縛から抜け出して、自分のもとに、ひょっこり戻って来るのではないか…?)と、万に一つの奇蹟を密かに期待して待っていたが、いくら待ってもそんな夢のような奇跡は何も起こらなかった。

    天の誓い

 その頃、強引な売り方をする詐欺商法が社会的問題になった。「お年寄りの貴重な年金を、騙して強引に奪う協会やり方は間違ってませんか?」まことはある日、疑問を感じてなおこに電話で聞いてみた。「そうね、だけど…」何故かなおこは次の言葉を飲み込んで、それ以上答えなかった。
 それから、はや一年が過ぎた。なおこから「今、妊娠三ヶ月です」との連絡が来た。それを知った時、まことは胸に強い痛みを感じた。(もうどうにもならない…) まことなおこに伝道され真理の道の一部に触れた恩義を感じていて、身重になったなおこがこれ以上無理をして倒れないようにと、生活費の一部を負担してあげ、せめて金銭的にだけでも彼女を支えていこうと感じていた。

     正しき主人

 一年後、なおこに二人目の子供が生まれた。まことはささやかなお祝いを送ってあげた。
 だがお互いに忙しくなり、月日は急速に過ぎ去っていった。そしてなおこは、三人の子供の母親になった。手紙には「今まで嫌で仕方がなかった夫の素晴しい面が、ようやく判かるようになり、愛せるようになりました」という内容が書いてあった。 送られた家庭の写真を見ると、そこには幸せをあきらめた女性の、悲しい顔があった。どんなに幸せを演じても、隠し切れない冷たい殺伐とした表情があった。必死に本心を隠そうとする、苦しそうなイメージが漂って来るのだった。
 まことはいつしか、なおこを追いつめて苦しめる、この組織の教義を激しく憎むようになっていた。だがなおこ「今井さんにも、教義による婚約を受けて欲しいの」としきりにまことに勧めるのだった。まことは既に(この教義の結婚観は間違っている…)と思い始めていた。「一生に一人しか選べないからこそ、人は心から愛する理想の相手に出会い、その愛情を完結すべきです。他人の意志で結婚相手を選んでも、決して幸せにはなれない気がします…」と自分の考えを主張していた。
 まことはもはやなおこの矛盾した願いなど無視するしかなかった。

 協会の実態が、マスコミによって報道される日がやって来た。それは、皮肉にも高貴な方の結婚式と交差する形で現われてきた。

 結婚の条件として「心が通じること、そしてプロセスが大切です」と答えられた皇太子の言葉が、まことの心に染み入るように聞こえて来た。 (「理想の相手」の心を射止めるまでの、粘り強い愛の姿勢こそ、真実の人間の正しい生き方だ)と確信するようになっていた。
 片や、自然な人間の情愛を絶ち切り、自由意志を歪めてしまうこの教団の教義が完全に間違っていると感じた。多くの信者達が惑わされる中で、全く対照的な立場で現われ、一番適切な時期に的を得た言葉と行動で示してくれる方の出現であった。 最も困難で苦しい選択枝を、愛情と知恵で乗り越えられ、人間としての正しい在り方を身をもって示してくれる姿を見た時、遂に自分の心を開放してくれる「真の主人」が現われたことを悟った。 まことは「偽物の主人」に従っていく信者たちを「本来の正しき主人」に向かわせる使命を急速に感じていった。

 

     閃きの時

 まことはある韓国人と「損害賠償」という非常に困難なトラブルに突然、巻き込まれてしまった。 その賠償のために、やろうとしていることが中断させられ、経済的に窮地に追い込まれて完全に身動きも出来なくなった。一年以上かかってその賠償問題を解決し、何とか決着をつけてやっとどうにか無事に乗り越えた。
 まこと「ホッ」としてもの思いにふけっていた。 ぼんやりしている頭の中で、時々フラッシュのように、何か不思議な「閃き」がよぎった。(何だろう…?) 最初それが何なのか判らずにすぐ忘れてしまっていた。だが次々に新しいイメージが続けて頭に浮かんできた。 (ハッ、これはもしかしたら、この閃きは真理を暗示する大切な言葉の断片ではないだろうか…?。忘れてはならない重要な「天のメッセージ」かも知れない…?)まことは直感した。 断片的にではあるが、少しづつ与えられる「謎解きのヒント」が、関連性を持って組み合わさり、まことの頭の中で大局的思考をかたち造っていった。 それからまことは、何か閃くと忘れないうちに、すぐに次々とノートに書き綴っていった。 やがてその掲示の内容は、2冊・3冊・・・とゆっくりと膨大な量に増えていった。

 それは、幼い頃に読んだ「おとぎ話」に登場する人物に関する内容だった。 その中で「花咲か爺さん」の話に、日本民族の辿って来た近代史の予言が隠されている事を予感した。(まず、この内容を一つ一つ実証していかねばならない…)まことは第一のやるべき仕事を悟った。
同時に まことの頭に、幼少の頃に起きた不思議な事件や忘れていた記憶が急に鮮明によみがえって来た。(自分の半生は、このおとぎ話の中に現れて来る「ポチ」に深い関わりを持っているのではないだろうか…?)

 まことは四十才になるまでに、近代に現れた善と悪の組織を交互に渡り歩き、西欧思想や宗教にさんざん惑わされながら、いつの間にか全ての過程を訓練として乗り越えてきていた。その道は、近代日本の苦悩の時代に生きた先人たちの道を再現する道のように思えた。
 (かつて軍閥という偽者の主人に従って、国家総動員して戦った「日本民族の道」を再び個人的に繰り返すかのように、まことはその象徴的再現の道を歩まされて来たのだろうか…?) (到底勝ち目のない無謀な戦争に踏み切り、隣国に迷惑をかけながらも、世界を相手にして戦わねばならなかった軍国主義時代の「悲惨な日本民族たち」の通った道を再現する立場に、自分は立たされていたのだろうか…?)
 この戦争が、悲惨な敗戦で終わったように、まことも又、親族たちの恩義をズタズタに切って、ただ真理の光をつかむために全てを犠牲にして来た。受けて来た恩をことごとく仇で返し、折角の好意や愛情を恨みと憎しみに変えて来た。 そして原爆のような痛烈な非難の一撃を親族の代表から受けた時、完全に敗北して落ちて散って果てたようだった。
 だがそれから新しい自分の道を求めながら、囚われていたかずよという「宝」を訓練のウスの中から取り戻して、悪の組織を密かに抜け出し、本来の自分の心を取り戻しながら、急速に立ち直っていくかに見えた。 そして再び、偽りの真理の案内人が思いがけなく近づいて来た時、またもや偽者の主人に心を惑わされながら、大切なかずよ」というを完全に見失っていった。
 まことは孤独の闇に一度は落とされたが、歪んでいくなおこという苦痛のあだ花を見ながら、しだいに「正しき主人」が誰であるのかを悟っていった。長い長い悪魔の呪縛から急速に抜け出していった。今まで信仰して持ち続けていた価値観のどこが間違っていたのかを悟っていった。
 韓国人との最後の不思議な事件に巻き込まれた時、倒産寸前の状態まで追いやられ、全てを失って、まるで灰のようになってしまった。その時、自分の魂を救いだしてくれる(真実の主人)の立場にある存在が近寄って来たのだった。まことは急速に立ち直っていった。

 まことは気がつくと、鎖国時代から現代に至るまでの、激動する日本の歴史の期間を、個人的に再現して歩まされてきていた。まことは、近代日本の通って来た道を、「雛型」として通過し、その集約した路程を象徴的に負わされ、あらゆる屈辱という試練を乗り越えなければならなかった。

    主人の使命

 まことはこの、不可解な事件に巻き込まれて、損害賠償として今まで蓄えた預金が空になるほど全て奪い尽くされてしまった。この冷たい風が吹きつけるかのような最後の試練をどうにか乗り越えた時、今まで封印されていた空白の脳に、閃きが突然咲き出した。その時、まことは自分のことをポチくんと呼んでいたかずよの言葉をふと思い出した。それは彼女のおどけた時のしぐさでポチ君、ハーイ!という何気なくやってくれていた戯れのギャグポーズの口癖の言葉だった。

(ん…?この言葉は大切な意味を含んでいる…この言葉の真意は何だったのだろうか…隠された意味を求めてひらめきの妄想世界に深く入っていった。(ハッ!、これは自分の前になおこかずよが同時に現れたとき、なおこのいる世界に引っ張られていく危険な事態に備えての彼女の精一杯に発し続けていた警告を含んだメッセージではなかったのだろうか?)と今頃になって思い当たった。今更ながら、(もしかしたらあの時「正しい主人」の立場にあったかずよは「ポチ」の立場にいたまことに対して、ニセの主人に惑わされて自分から離れたりしないようにと、さりげなくも必死に忠誠を求めていた大切な警告のメッセージだった)とハタと気がついたのだった。まことは無意識にも大切なメッセージを投げかけていたかずよの言葉の意味に気づかずに、うかつにも宝を見失ってしまったというのか…。それはまるでが海底に眠る宝を見つけて天に昇ろうとしたとき、もう一つの偽の宝が現れて、せっかく手につかんでいた宝がどちらか本物か判らなくなって思わず手から離して落としてしまった悲しい龍にのようであった。もしも、失くした黄金のタマをもう一度、取り戻すチャンスが与えられるならば、今度こそ、惑わされないで絶対に落とさない!しっかりと手に掴んで天にきっと昇ってみせる…。まことは宝の玉の本物とにせものを見抜く、しっかりとした眼力を持つことが重要だと切実に思うようになっていった。そして(ひょっとすると彼女は正しい主人の果たすべき役割を持っていて、これから始まる「枯れ木に満開の花を咲かせる」為の何かあっぱれなる大切な仕上げの仕事を演じる存在に違いない…)と感じ始めていた。(この大切な閃きを伝えるべき相手はもはや彼女以外にはいない…)だがまことにはかずよに閃きを伝える手段も無く、きっかけも何も与えられていなかった。静かにただ灰のようになった自分に近づいてきてくれるのを待つだけしかなかった。
 その頃、彼女もまた不思議にもまことのことが気になりだし、何年も月日が経っていたが、ある日ひょっこりと電話をして来た。かずよは一児 の母親になっていた。まことは決して自分からは電話する事が出来なかったが、かずよまことの不思議な直感の話をするようになってから、近づきだしひらめきの話の続きの内容を聞きたくて、いつも一方的に何度も何度も電話をかけて詳しく尋ねてくるようになった。


      謎解き

 青春の放浪を続けながら「思想の訓練」を受けてきたまことが四十歳になった年、ふと昔の祖母ゼンの不可解な言動や、幼少の頃に起きたさまざまな不思議な記憶が鮮明に甦って来た。 昔、今井家の一代目(喜平とゼン)「饅頭屋」だったが、戦時の食料難で原料が不足し家業を辞めてしまい、山奥の棚田を買って稲作を始めた。 だが食料難から解放されて、饅頭屋再建のチャンスが訪れても、今井家の二代目(正喜とチカ)は二人とも饅頭屋の仕事を嫌がってやらず、次男の芳樹おじさんがもし戦死せずに生きて帰っていれば、その饅頭屋の家業を継ぐはずであった。 こうしてこの饅頭屋の家業の真意は三代目まで封印されることになった。
 実のところ、母のチカの実家の田口家でも、昔は一代目の甚七が「お菓子屋」の家業を始めていた。
 青春を思想や宗教に翻弄されてきた遠回りの宿命の道から抜け出して、まことは以前からやりたかった小さなデザイン会社を独立してやっと創業した。 ある日、文字や絵を書いて伝えるというこの看板の仕事の真意が、「お菓子屋」と「饅頭屋」という二つの家系の家業の目指す方向や使命が奇妙に関連して、密接した深い意味のある仕事に一致していく予感を感じ始める。
 それは(世の終わりの日に、選ばれた二つの民族「日本ユダヤ」が出会って、世界を平和に導く…)という、「神の国」の使命と予言が、「米と豆」との関係で例えた「日本の食文化」の中に、謎として秘められ暗示されていることに気がついた一瞬であった。 このとき天からの声ならぬ声がまことの心に聞こえて来た。(まことよ、一代目の使命は、三代目のお前の使命で完成する。…この謎を解きなさい…) まことは、そのつぶやく声を、我が「果たすべき使命」を暗示する「天の意志」として受け入れた。

 マークや文字をデザインする仕事を続けながらも、この「謎解きの使命」に心血を注ぎ、訓練としてひたすら打ち込んでいくようになっていく。 まことは、色々な会社のロゴやマークをデザインする仕事を続けていく中で、いつの間にか世界の国の地形や国旗の象徴的意味、そして組織の紋章などに隠された比喩的意味あいと、その「謎と真意」を感覚的に捉える訓練を受けてきていたのだった。 思想、哲学、宗教と、さまざまな世界を彷徨い、『遠回り』をしながら「青春の放浪」をして来たまことが、ようやく辿り就いたデザインの仕事は、まさしく近代歴史に現われて来る、ありとあらゆる組織の本質を見極めて、謎解きの仕上げを完成する不思議な能力をも開発してくれていたのだった。

 まことは、妄想と仮説が入り交じった荒唐無稽な小説を書くようになった。霧に包まれた夢のような世界を彷徨って来た知恵遅れの青年が、果して本当に「光の道」を解き明かしていけるものだろうか?…いや兄の私も関わったガス中毒事件による「謎の霧に被われ続けていた不思議な頭脳」だからこそ、その霧が晴れた暁には、「閃きの花」が咲き始め、隠されていた「日本の道」を見究める可能性が有るのかも知れない…。 まことは今、「光の道を備えよ!」という、生きて光の道の真意を明かす預言の使命を静かに始めようとしていた。

そして…この小説の筆者であり、まことの兄であるのりおことは、今、刻々と死が直前に迫る病床の中で、ギリギリになって弟の重要なメッセージに気がつき、兄の立場から見たこの家に課せられた使命が一体何であるかを模索する小説を書き終えようとしている。白血病による死への秒読みに入った私の無念の思いは、親族達の雑言を真に受けて、ただただ足りない弟を軽んじて最後まで地上で生きて支えてあげられなかったことである。もしも許されるならば、生きているうちに、犯してきためぐりを清算して、節穴の親族たちの思い込みやとり違いを正したかった。しかし天界から導いていく・・・という、もっとより大きな使命が待ち受けているのならば、身霊の曇りを直すためにあえて命をかけて挑み、私は死をもってこの過ちを償うことで日本民族が大和魂を取り戻す為の条件を喜んで果たして行きたいと思う。これから弟が描いていくであろう長編小説光の道を備えよ!」の求道編の文章の中で私の魂が甦り、言葉を失った弟の体を借りてやり残した閃きの文を完成させる悲願の執筆を果たしていけるように霊界から導けるならば幸いである。 …遺書

 ――  おわり ―― 

 平原遺跡から出土した世界最大の銅鏡(直径46.5p)は、考古学者の世界からほとんど評価されない。「巨大な狛犬」まことが取り戻すべきものは、壊れた破片ををつなぎ合わせて、復元されていく銅鏡の模様や形に隠されたある法則を象徴する何かである。この地形に隠された狛犬が、赤米と共に長い古代の眠りから目覚めて、ゆっくりと動き始める。 封印されていた三種の神器という宝の正体は、復元された銅鏡と同じ条件がこの二つの家系の間に成就した時に、初めて明らかにされていく。


小説 ポチよ 泣かないで」 V 完結編 第3話 おわり

    おわり

あとがき
まことの課題は伯母のシマと出会うことから、親族一同の課題へと新たな高い次元となっていく。
まことの抱く英霊のポチの課題@と、伯母シマが残した自叙伝から導きだした家訓Aテーマへと…
放浪し彷徨いながら辿り着いた先は、伯母
シマや母チカの実家の祖父甚七暗黒の歴史であった。
まこと伯母シマの抱く共通の人生課題は、歴史的封印を解く新たな「光への旅」へとなっていく。

第1話

第2話

第3話
終わり

大なを背負う少年の回想記
ウスの訓練ポチよ 泣かないで」
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小説 ポチよ 泣かないで

第三章 完結編 


悲願ウスキネ変身
青年を訓練を生み出す
灰へ
神饌として導く天界協助

青年は光を見失い暗闇に誓う
英霊ウスの中へ導かれていく
 英霊達の悲願は戦後世代を導き、
閃きの花を生み出すカマドの灰
の奇跡の力を見守る天界協助

後編予告 
全ての道はなぞときに必要な通過すべき路程であった

 上に スクロール

 
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